JFAファーデザインコンテスト2018
最終審査会・表彰式レポート
「JFAファーデザインコンテスト2018」の受賞作品
ファーを通して再考する、ファッションのあるべき姿
前回同様、コンテストの会場となったのは東京・東銀座にある時事通信ホール。当日は、毛皮を取り扱うメーカー関係者を中心にメディアやアパレルのバイヤー、服飾専門学校生・大学生などが多く来場し、授賞式前にも関わらず会場全体が興奮と熱気に包まれた空間に。
この「JFAファーデザインコンテスト」は、高品質なリアルファーを取り扱うことができる国内唯一のコンテストとして知られ、今では国内のみならず世界各国で開催されるほどの人気を博している大会でもあります。また日本毛皮協会(JFA)では、毛皮協会に加盟する各メーカーと連携し、最終審査会に選出された16名の参加者に対して、各メーカーが協力する形で作品を制作しています。
今年度で17回目を迎える同コンテスト。そのテーマに掲げられたのは、「活かそう、自然からの贈り物」。毛皮が持つ素材や特性を活かしながら、独創性に富んだアイデアやファッショナブルなアプローチだけではなく、現代社会が直面するサスティナブルな問題に対してしっかりと向き合い、ファッションを通して取り組んでいくことの重要性が問われました。そうしたファッションが担うべき責任や役割というものに関して改めて考える機会となったのはもちろんのこと、作品制作においても学生たちの力だけではなく、協力会社としてサポートを担ったメーカー各社のスタッフとの緻密なコミュニケーションの生まれる企業と学生の出会いの場、さらには実践的なデザイナーを育成する環境としても機能しています。
若き才能がひしめき合った、コンテストの行方
熾烈な予選をくぐり抜けて来たファイナリストたちによる、珠玉の作品が並んだ最終審査会。同審査会では、前回と同じく、ショーの直前にプレゼンテーションを行う時間を設け、審査員へ個別にアピールすることが可能となり、モデルが着用した作品をランウェイ形式で見ながら審査員が採点を行い、各賞を決めていきます。
今回見事グランプリを勝ち取った中村 仁美 (愛知文化服装専門学校)をはじめ、授賞6作品を見ると、コンテンポラリーでクリエイティブなデザインかつサスティナブルな想いの詰まった作品が並びました。今後のファッション界を担っていく若き才能との出会いに、有力デザイナーやジャーナリスト、スタイリストなどが名を連ねた豪華審査員陣も大いに刺激を受けたようです。村上要氏の言葉にもあった通り、「頭で理解するのではなく、心で感じて、人に共感してもらえるようなクリエイション」は、未来のファッションシーンでも大きなテーマとなっていくはずです。同コンテストを通してどんな才能や作品が生まれていくのか、今後も目が離せません。
審査員の各コメント
【シュエ・ジェンファン Jenny Fax デザイナー】
みなさん素敵でした。
【坂部三樹郎 MIKIO SAKABE デザイナー】
お疲れ様でした。僕は今回でこのコンテストの審査をするのが2回目なんですけど、若い子たちがこうしたリアルファーを使えるというのは珍しいことですし、周りの職人さんたちの力添えもあって、普段見る学生や若い人たちの感性とはまた異なる、とても説得力のある作品になっていたと思います。 ファストファッション全盛の今ですが、若い子たちも本当に良い素材を使える場というのが、今後も増えていくといいなと思いました。同時にそれがファッションを楽しくさせることであり、それこそサスティナブルなものを生み出すきっかけになるんじゃないかなと思います。
【馬場圭介 スタイリスト】
みなさんの創造力には本当に感激しました。 今回受賞された方もそうでない方もこれからどんどんセンスを磨いていって、頑張っていただきたいと思います。ありがとうございます。
【村上要 WWD JAPAN.COM編集長】
皆さんお疲れ様でした。今回のテーマ「活かそう、自然からの贈り物」には、私たちがいま直面しているサスティナブルという問題とどう向き合うかという意味もあったと思います。そこで、大切なのは、頭で理解することはもちろん、心で感じて、人に共感してもらうこと。そういった意味で今回のグランプリは、その象徴でもありました。今後もみなさんがこうした作品を作る際は、頭で理解するのではなく、心で感じて、人に共感してもらえるクリエイションにチャレンジしてもらえたらと思います。
【柳翔吾 FAKE TOKYO チーフディレクター】
受賞されました方々、本当におめでとうございます。ファーを通してエキサイティングなデザインを見れて、非常に楽しかったです。今後みなさんがデザイナーとして活躍されていく中で、さらにファーの持つ可能性を追求していただき、また新しい作品と出会えることを今から楽しみにしています。お疲れ様でした。
◇主催
一般社団法人日本毛皮協会
◇募集テーマ
活かそう自然からの贈り物
◇応募総数
2,046点
◇第一次審査会
平成30年9月5日非公開審査16点選出
◇最終審査会
平成30年11月19日時事通信ホール
プレゼンテーション(非公開)・ファッションショー形式の公開審査
◇後援
経済産業省/カナダ大使館/デンマーク大使館(順不同)
◇協力
国際毛皮連盟(IFF)/コペンハーゲン・ファー(KOPENHAGEN FUR)サガ・ファー(SAGA FURS)/ノースアメリカンファーオークションズ(NAFA)/香港毛皮業協会(HKFF)/東京毛皮商工業協同組合(順不同)
◇審査委員
馬場圭介/村上要/坂部三樹郎/シュエ・ジェンファン/柳翔吾(順不同敬称略)
◇各賞
●グランプリ(1名):賞状、賞金50万円及び副賞(サガデザインセンター研修旅行及び2019香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)
中村仁美さん/愛知文化服装専門学校(ニチロ毛皮(株))
●優秀賞(1名):賞状、賞金20万円及び副賞(コペンハーゲンスタジオ研修旅行)
本村光輝さん/東京モード学園((株)ネモファー)
●コペンハーゲン・ファー賞(1名):賞状、賞金10万円及び副賞(コペンハーゲンスタジオ研修旅行)
早田賀音さん/大阪文化服装学院((株)ネモファー)
●サガ・ファー賞(1名):賞状、賞金10万円及び副賞(サガデザインセンター研修旅行)
ニコラ ティーレさん/文化ファッション大学院大学((株)パッション)
●NAFA賞(1名):賞状、賞金10万円及び副賞(スタジオNAFA研修旅行)
朝香はる菜さん/大阪モード学園(ツカキ(株))
●HKFF賞(1名):賞状、賞金5万円及び副賞(2019香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)
井辺弥月さん/愛知文化服装専門学校((有)東京ダイヤ)
※( )は制作協力会社