JFAファーデザインコンテスト2015最終審査会・表彰式レポート
「JFAファーデザインコンテスト2015」の受賞作品と受賞者
ここから世界へはばたく日本の若手デザイナー
ファーデザインコンテストは、若く感性豊かなデザイナーの育成と発掘、毛皮協会各社の技術向上と豊かな才能との出会いを目的に、毎年開催しています。今年で14回目となるこの大会は、JFA の活動のなかでも最大の事業のひとつです。このコンテストをきっかけに世界へと活躍の場を広げる若手デザイナーも数多く、2015 年11 月に韓国で開催された「第2回アジア毛皮デザイン・コンテスト」では、昨年JFA ファーデザインコンテストで入選を果たした青木春七さんが「The Most Creative Award」を受賞しました。
今回は、全国の服飾専門学校・大学をはじめ、一般の方々から、近年では最高となる2391作品もの応募をいただきました。その中から一次審査を通過した20作品が、この日ステージでファッションショー形式の最終審査に臨むのです。入選したデザイン画をかたちにするために、デザイナーたちと制作協力会社のスタッフたちが密にコミュニケーションを取り、長い時間をかけて制作にあたります。JFA では毛皮の普及のために、服飾専門学校への講師の派遣、セミナーの開催などを実施していますが、このファーデザインコンテストは普及に加えて、毛皮の加工技術の発展にも大きく貢献しているのです。
グランプリを受賞した鈴木宏志さん(右)
斬新なアイデアの作品が続々登場、ハイレベルな闘いに
コンテストのテーマは「活かそう自然からの贈り物」。人類史上最古の服といわれる毛皮は保温性・耐久性に優れ、リメイクも可能、最後には土に還すことができる天然素材。そのふわふわした柔らかな感触と温もりによって安心感を得ることができ、まさに自然が人類に与えてくれた贈り物といえます。この毛皮という素材の特性を活かしつつ、どのような新しいデザインを生み出すのでしょうか。若いクリエイターの感性が試されます。
長期間に渡ってタッグを組んできた若手デザイナーと制作協力会社スタッフたち。彼らの努力の成果が一堂に会するとあって、審査会スタート前から会場には緊張感と期待感の入り交じった独特の雰囲気が漂っていました。
13時にショーは開幕、ファイナリストたちの作品が次から次へとステージに登場します。今年の特長は、全体として新しく挑戦的・意欲的な作品が多く見られたこと。LED ライトを用いたもの、ジェンダーレスのもの、日本の伝統を取り入れたもの、カラフルなもの、毛皮そのものの色を活かしたものなど、あらゆるアイデアがめまぐるしく目に飛び込んできます。すべての作品が紹介されるとショーはいったん休憩、バックステージにて5人の審査委員による厳正な審査が行われ、ふたたびステージにて最終選考の結果が発表されました。
審査委員の皆さん
審査員評
勝井北斗さん
今回、初めてファーデザインコンテストの審査をさせていただきましたが、正直なところ「面白かった」という感想です。技巧的なところもいろいろ見ることができ、ファーは面白い素材だなと感じました。採点にあたっては、技術的なことはともかくとして「いかに楽しんで作っているか」という観点で、直感的に審査しました。今回の受賞作はどの作品からも楽しさやファーの豊かさが伝わってきたと思います。
八木奈央さん
ファーデザインの審査は初めてで、これだけ数多くのファーの作品を見たのも初めてです。デザインそのものの楽しさの中に素材との対話が見えたというか、デザイナーと制作者がすごくコミュニケーションを取りながら作られたのだということが垣間見えました。特にグランプリの作品については、いろいろなファーの魅力を引き出していると感じます。そういったところが今回の受賞のポイントだったのではないでしょうか。
田居克人さん
ここ数年、このコンテストで審査委員をさせていただいていますが、今日、審査委員室で話題になったのは、本当に年々デザインの質も上がり、それを支える制作者の技術も進歩しているということです。実際のところ、それほど大きな点差はなかったのです。それだけに、デザインがどれだけ新しいことに挑戦しているか、ということが問われると感じました。制作者の努力がとても光った審査会だったと思います。受賞者だけでなく応募された全ての方には、これからももっと新しいことに挑戦してほしいです。
原由美子さん
壇上に上がれなかった作品も含め、今回もまた力作ばかりで、審査にも大変悩みました。私としては自然の恵みである毛皮の温かさを大切にしてほしいという思いがあり、そういう意味では受賞作は素材としての毛皮の面白さと温かさをちゃんと共存しているのでよかったと思います。NAFA 賞の受賞作品はとてもデザインとしてよいのですが、欲を言えばもっと毛皮の量を見せてほしかったと思います。今回は壇上に4人の男性がいますが、これも珍しいことですね。ジェンダーレスで作られた作品が見られるなど、そういうところにはやはり時代を感じるコンテストになったと思います。
小西良幸さん(総評)
今日は本当に、作品のバリエーションの豊富さにビックリさせられました。フォークロア、ポップアート、近未来的なもの、装飾的なものなどなど。それからもうひとつ、発想がすごく斬新だったと思います。年々レベルアップしていますが、今回もまたとてもレベルの高い闘いでした。去年や一昨年だったら絶対グランプリを取っているだろうな、という作品が選ばれていないのですから。本当にどれも素晴らしい出来栄えで完成度も高く、壇上に上がれなかった作品も決して悪いものではありません。このコンテストも今回で14回目ですが、長く続けるというのはすごいことだなと実感しています。
最近のファッション業界は末期のようなイメージがあります。普通のものの丈を長くしたり短くしたり、前と後ろの素材を変えてみたり、なんとなく先に進めない。ところが今日のコンテストでやっと未来が見えてきた気がします。観客席にいらしている方の中には若いクリエイターを指導する立場の方もいらっしゃると思いますので、その方たちには、この場で成果を感じ取って、その感覚を持ち帰り、若いクリエイターの育成に力を注いでもらえたらと願っています。
◇最終審査会・表彰式
2015年11月20日(金)13:00〜15:00 東京・東銀座 時事通信ホール
◇主催
一般社団法人 日本毛皮協会(JFA)
◇後援
経済産業省、カナダ大使館、デンマーク大使館 ※順不同
◇協力
国際毛皮連盟、アメリカン・レジェンド、コペンハーゲンファー、サガ・ファー、ノースアメリカンファーオークションズ、香港毛皮業協会、東京毛皮商工業協同組合
◇各賞受賞者
●グランプリ:鈴木 宏志 (文化服装学院)
賞状、賞金50万円、副賞(サガデザインセンター研修旅行及び2016香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)
●サガ・ファー賞:杉本 知春 (大阪文化服装学院)
賞状、賞金10万円、副賞(サガデザインセンター研修旅行
●アメリカン・レジェンド賞:碇山 夏美 (明美文化服装専門学校)
賞状、賞金10万円、賞品(ブラックグラマのケープとバッグ)
●NAFA賞:内村 円悠 (文化服装学院)
賞状、賞金10万円、副賞(スタジオNAFA研修旅行)
●コペンハーゲン・ファー賞:加賀 龍 (一般)
賞状、賞金10万円、副賞(コペンハーゲンスタジオ研修旅行)
●HKFF賞:加藤 千恵 (愛知文化服装専門学校)
賞状、賞金5万円、副賞(2016香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)
◇審査委員
小西 良幸、原 由美子、勝井 北斗、八木 奈央 、田居 克人 ※順不同・敬称略