JFAファーデザインコンテスト2016最終審査会・表彰式レポート
「JFAファーデザインコンテスト2016」の受賞作品と受賞者
記念すべき第15回は記憶に残る1日に
JFA の活動の中でも最大の事業のひとつであるファーデザインコンテストは、感性豊かな若手デザイナーの発掘と育成、毛皮協会加盟各社の技術向上と将来性ある豊かな才能との出会いを目的として毎年開催されています。このコンテストをきっかけに世界へ羽ばたくデザイナーは数多く、昨年の入賞者 安藤優生さんは、2016年10月に東京で開催された「Asia Remix 2016」でFEMALE部門のグランプリを獲得しています。
15回目という節目を迎えた今回もまた、全国各地の服飾専門学校・大学をはじめ、一般の方々より2044作品という多数の応募をいただきました。デザイン画による第一次審査で、まず20作品が選ばれます。入選作品のデザイナーたちにとっては、実はここからが勝負どころ。最終審査会はファッションショー形式なので、作品を実際にモデルが着用して披露します。デザイン画を毛皮で形にするために、制作協力会社のスタッフたちと密にコミュニケーションをとりながら、長い時間をかけて制作に取り組むのです。
そして迎えた最終審査会当日。会場のある東京・東銀座では朝から雪模様。都心での11月の降雪はなんと54年ぶりということで、まさに記憶に残る日に開催された、記念すべき第15回大会となりました。
グランプリを受賞した藤井真耶さん(右)
審査委員の皆さん
これまでにない熱戦。審査が長引いた結果……
従来の最終審査会は、モデルが着用した作品を鑑賞しながら審査員が採点を進め、ショー終了後に審査員室で集計、話し合いにより受賞作品を決定してきました。しかし、今大会からは、過去のアンケートによりファイナリストからの要望もあり、ショーの前にデザイナーがプレゼンテーションを実施する時間が設けられることになりました。
プレゼンテーションはバックステージで行われ、持ち時間はデザイナー一人当たり2分間。どのデザイナーも、多少は緊張しながらもしっかりと審査員たちに作品をアピールしていました。自分のポリシーや作品が生まれた背景などを伝えたり、タブレットや資料を使って説明をしたり、審査員たちからの質問に丁寧に答えたり。また、いろいろとアドバイスする場面も多々あり、若手デザイナーを育成したいという、先輩(=審査員)の思いが伝わってきました。
さて、事前プレゼンテーションのおかげでショーの後の審査会はスムーズに進むかと思いきや、優秀作揃いの今回の入選作はいずれも優劣つけがたく、審査会は近年稀に見る熱戦に。5人の審査委員が悩みに悩みぬいて、ようやく受賞6作品が決定した時には、予定時刻をかなり過ぎてしまったほどです。
審査員評
勝井北斗さん
すごい接戦で本当に受賞作品を決めるのに悩みました。今回は本当に多種多様なデザインがあふれていて、審査していてとても楽しかったです。全体として今回はポップな印象があったので、若い人にはちょっと難しいかもしれませんが、次回はもう少しクラシックでモダンな毛皮のデザインも見てみたいと思います。
八木奈央さん
グランプリに選ばれた作品のように、毛皮らしい豊かさをデザインに落とし込んだ作品が見られた一方で、例えばデニムとのコンビネーションなど、機能性やスタイリングを楽しむ毛皮の新しさを追求した作品があったのが印象的でした。次回も新しい価値観を見せてくれることを期待しています。
田居克人さん
今回は最後の最後まで賞が決まらなくて、なかなか面白い審査となりました。デザイナーの方も、全く毛皮を着ないだろうという国の方、毛皮をよく着るだろうなという国の方と、バラエティに富んでいて、とても興味深かったです。今回かなり新しい流れが出てきたと思うので、これからはその新しい流れが主流になっていくことを望んでいます。
原由美子さん
長年このコンテストで審査をさせていただいていますが、今回ほど決まらなかったことは初めてです。例えば全部分解できたり、部分的に外すことができたり、ショーだけではなかなか伝わらないけれど、いろいろ工夫されていた作品がたくさんありました。いずれも素晴らしい作品ばかりです。ただ、本来のアウターとしての毛皮らしさとは違い、ワンピース、ドレス風の作品が多かったのが少し気になりました。
小西良幸さん(総評)
グランプリ受賞作品をはじめ、こうして壇上に並ぶとやっぱり時代を感じ取ることができます。数年前からフォークロア、エスニック風のものが台頭してきて、今回もそうした作風が多く見られましたが、2014年でも2015年でもない、2016年の作品だと思います。 今日は私たちも審査員室でものすごく迷いました。作品全体としてインパクトはあるけれど、どこか引っかかって、ある審査委員の言葉を借りれば「予定調和」みたいな作品が多い。中にはブルゾンのリバーシブルなんていうのもあり、本来の若い世代のニーズに合っているのだろうけれど、こういうコンテストで我々が受賞作として見せていいのかどうか。そんなことも議論しました。
この審査を通して思ったのは、そういう時代であるということを私たち世代も受け入れないといけない。今、既成概念が次々と壊されていくような時代にあって、毛皮業界、ファッション業界そのものも、そういう今をきちんと受けとめて、試行錯誤しながら、模索しながらやっていかなくてはならない。そして私たちも少しは新しい芽を育てていく役割を担いたいと、そんなことを感じた審査会でした。
◇最終審査会・表彰式
2016年11月24日(木)14:30~17:00 東京・東銀座 時事通信ホール
◇主催
一般社団法人 日本毛皮協会(JFA)
◇後援
経済産業省、カナダ大使館、デンマーク大使館 ※順不同
◇協力
国際毛皮連盟、アメリカン・レジェンド、コペンハーゲンファー、サガ・ファー、ノースアメリカンファーオークションズ、香港毛皮業協会、東京毛皮商工業協同組合
◇各賞受賞者
●グランプリ:藤井 真耶 (名古屋モード学園)
賞状、賞金50万円、副賞(サガデザインセンター研修旅行及び2017香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)
●サガ・ファー賞:林 載憲 (文化ファッション大学院大学)
賞状、賞金10万円、副賞(サガデザインセンター研修旅行)
●アメリカン・レジェンド賞:ニコラ ティーレ (文化服装学院)
賞状、賞金10万円、賞品(ブラックグラマのジャケット)
●NAFA賞:杉村 綾 (国際トータルファッション専門学校)
賞状、賞金10万円、副賞(スタジオNAFA研修旅行)
●コペンハーゲン・ファー賞:リュウ シュンシン (文化服装学院)
賞状、コペンハーゲンスタジオ研修旅行もしくはミンク20枚及び賞金10,000デンマーククローネ
●HKFF賞:世古口 友里 (中部ファッション専門学校)
賞状、賞金5万円、副賞(2017香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)
◇審査委員
小西 良幸、原 由美子、勝井 北斗、八木 奈央 、田居 克人 ※順不同・敬称略